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2017/12/26 更新

まさかの自転車落車事故、そのときに! サイクルセイフティサミット2017参加レポ

自転車とのつながりをもつそれぞれのスペシャリストが講師やアシスタントを担う

まずは座学で気持ちを引き締める!

サミット序盤は、座学からスタート。ファーストエイドの重要性を説きつつ、さらに自転車レースやイベント特有の落車による事故の特徴、救急隊の現状と119通報の基本など。それぞれの講師が実体験に基づく講義を行い、参加者たちの気を引き締めさせる。冬の朝早くから始まったサミットの空気がピリッと引き締まる思いだ。

サイクルスポーツに特化したファーストエイド講習は全国でも珍しい

続いて、メインの実戦的シナリオトレーニング! 40人以上の参加者を4班に分け、「安全確保と状況評価」、「初期評価とCPR」、「全身観察・詳細観察」、「処置と搬送」の4つのセクションを体験する。全員が役割を持ち、そしてそれを代わる代わる行う、超実践派トレーニングだ。さぁ気合を入れてスタート!

1、安全確保と状況評価 ~現場はパニック!演技は迫真!~

落車した選手とマーシャルだけでなく、観客や他の選手など実際のレース現場を再現

レースやライドイベントで起きるさまざまな落車事故を再現。具体的には「高速レースのコーナーでの集団落車」、「初心者を引率する走行のなかでのガケ転落事故」のようなシチュエーションだ。現場をまとめるリーダー役、落車してひたすら脚の痛みを訴える選手役、まわりで混乱する他選手役など順繰りで成り代わる。みな迫真の演技!(冗談抜きで)

落車した選手をどのように処置するのかが問われるが、ほかにも対応すべきことが山盛り

混乱する事故現場でどう対応するのか? 自分を含めた全体の安全をどう確保していくかがチェックされる。ケースバイケースの事故現場に絶対的な正解はないが、責任を負うマーシャル役やリーダー役は必死になって場を指示・管理する。しかし、あとになると「後続車追突の可能性を忘れていた!」と反省したりとなかなか難しい。パニックにならずに広い視野を持たなければならないと講師がきれいにまとめた。まったくそのとおりです!

 

2、初期評価とCPR ~え、呼びかけちゃダメなの?~

なによりも頸椎の保護が最優先。固定したら救急隊が来るまで離さない

突然だが、落車して地面に突っ伏したままのライダーを見たらあなたは最初にどう行動するだろうが? まずはかけよって声をかけるだろうか?かけますよね?……でも落車のときは違うのです! 正解は「忍び寄って、両手で負傷者の頭を両脇からギュッと押さえる」だ。襲いかかっているわけではなく「頸椎(けいつい)保護」(これは本サミットで繰り返し説かれた重要ワード)のための行為だ。「どうした!?」と問われると負傷者は反射的に振り返り、首の頸椎を痛めてしまう可能性がある。それを防ぐため、あらかじめ頭を押さえ、首を動かせないようにしてしまう。その後に「救護にきました。安全のため首を固定しています。意識ありますか?名前言えますか?」と続け、初期評価を行う。うーん、これには驚いた。

頭部を押さえたまま、まわりの人へ指示を出す。焦らず、的確に!

あわせて心臓マッサージや、AEDを使うトレーニングも行う。つまり心肺蘇生法(CPR)だ。単純なマッサージ行為や、使いやすくした機材でも、それが命の危険を伴う場面だとどうしても焦りが出てしまうもの。自分だけでなく、まわりの人たちの協力を仰ぐ(119番通報、心臓マッサージの交代など)ことも重要だ。

 

全身観察・詳細観察 ~全身チェック! 痛みはありませんか?~

頸椎の安全が確保されたら身体のチェックを行う。受傷者への声掛けも大事!

119番が必要か判断するための、または電話後救急隊がくるまでの間になすべき行為だ。簡単にいえば、頭の上からつま先までの触診。両手を使ってやさしく抑えるように各部位に触れていく。「ここは痛くないですか?」とやりとりしながらチェックすることで、具体的な状態を救急隊に伝えられるはずだ。痛みがある箇所には2度は触れない!

現役の消防署員(ロードレースチームに所属)が救急時の対応について教えてくれる

また、救急車やドクターヘリには数に限りがあり、観察・診察の結果、肩や腕の軽い骨折程度のケガと判断されたら、あえて救急車を呼ばずに病院に行った方がいいことも。病院にとっても受傷者にとっても効率的な対処となる。

 

4、処置と搬送 ~人間の身体(とくに上半身!)はマジで重い!~

1人が頸椎を保持。3人が持ち上げる。1人が担架を入れる。連携が大切なログリフト

動けない受傷者を正しく処置するために身体を動かさなければならないこともある。安全な場所へ搬送する必要もあるかもしれない。このトレーニングでは受傷者を担架に載せるまでの一連の流れを習う。動かさないことも大事だが、道路上にうつぶせで倒れている人をそのままにはできない! 1人ではできないため、3人以上のグループで対応。ここでも頸椎保護を最優先にし、最初から最後まで手は頭を押さえたままだ。とにかく頸椎保護は身体全体を動かしても動かさなくても行う!

 

ログロール。負傷者の身体を90度傾け、下に担架を引き入れる。頭部(頸椎)は保持!

ログロール、ログリフトという傾け式、持ち上げ式の担架載せ方法を実践。ログリフトでは人間の上半身がいかに重いかを実感。体重の軽い女性でも上半身を背中から持って持ち上げると腕がプルプルしてしまう! 4人で持ち上げてもだ! 私がひ弱なせいでは決してない! みんなそう言ってたから間違いない!

 

サミットを終えて ~「失敗」ができる場所~

次に4つのトレーニングを踏まえた総合的なシナリオトレーニングを行い、事故の発生からコースクリアの状態になるまでを参加者全員でシュミレーション。今日のおさらいを最後まで実技で体感していく。それぞれ経験の差はあれ、全員が一体になってシナリオを行うことで経験値が上がっていく。最後は質疑応答や実際の事故現場を体験したモデルケース紹介をして終了。仮想のケガ人(?)は多数出たが、すべてのトレーニングを無事に終了した。

落車事故について知らなかった事実を知り、対処への経験に自分を慣れさせる。こうすることで、いざというときに正しいファーストエイドが行える! サイクリングショップの店長や、サイクルイベント事業代表者などの参加が目立った本サミットだが、必ずしも自分が救護のリーダーになる必要はなく、救急隊に引き継ぐ前の最良のサポートができるようになるだけでも大きな意味がある! それに頸椎保護の重要性、人間の重さ、受傷者になったときの気持ちまでわかる機会などめったにない。

 

このサミットの代表、安藤隼人さん。サイクルスポーツファーストエイドのパイオニア

代表の安藤さんは本サミットに関して「山岳トレイルなどではこうしたファーストエイドの実技トレーニングがありましたが、サイクルスポーツにはまったくなかった。だから作ったんです。協力してくれた多くの講師たちも同じ思いでこのサミットを作ってくれています」、「今日は失敗してもいいんです。こういうトレーニングでの失敗と経験を積み重ねていくことが、現場での正しいファーストエイドに役立つんです」と語る。サイクルセイフティサミットは来年も開催を予定しているとのこと。ぜひ来年はこれをお読みになっているあなたも参加してみては? ※ほんとうに勉強になります!

 

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