バイシクル特集

2017/9/19 更新

ツール・ド・北海道2017を振り返る~31回目を迎えた伝統の国際ステージレース(前編)~

7年ぶりに道南エリアで開催された2017年大会、目玉は観光地の函館山を交通規制した山頂ゴール

31回目の今年はどうなるのか注目していたが、函館市や周辺市町村の全面協力のもと、道南地区での素晴らしいコースレイアウトで実施され、大会関係者のさらなる意気込みが感じられて嬉しく思ったのは私だけではないだろう。終始レースを動かしてきた優勝候補NIPPO Vini Fantiniの大門宏監督も今年のコースレイアウトを高く評価しており、特に函館山を交通規制して行われた最終ステージはきっと大会関係者にとって悲願だったでしょうと語っていた。

今年のコースレイアウトは以下のようになっている。
9月8日(金)第1ステージ 函館市函館競輪場前 〜 北斗市運動公園前 162km
9月9日(土)第2ステージ 北斗市運動公園前 〜 木古内町JR木古内駅前 185km
9月10日(日)第3ステージ 函館市函館競輪場前 〜 函館市函館山山頂 77km

 

最終ステージのゴール後、今年のツール・ド・北海道を振り返る大門宏監督(NIPPO Vini Fantini)

函館山の山頂ゴールは展望台の上にいる観客の大歓声を浴びながらゴールする

第1ステージで総合優勝争いは17名に絞られた

第1ステージのゴール、ピエロパオロ・デネグリに僅差で鈴木龍が勝利。先行した岡本隼が3位

まずレースの前半戦を振り返ると、初日の第1ステージの2つ目の登りからレースは大きく動いた。
この日山岳賞を獲得した草場 啓吾 (日本大学)を含む 序盤から逃げた6人が一時は7分以上の差をつけたが、最後の登りでは3人となり優勝候補のブリヂストンアンカーやNIPPO Vini Fantiniが積極的にペースを上げて最後の登りでは先頭3人と2分以内に縮め射程圏内に捕らえた。メイン集団の登りのペースアップが強力だったため、総合優勝争いは17人に絞られた。そのなかで第1ステージを制したのはブリヂストンアンカーの鈴木龍。国際ステージレースでは初優勝で同時にポイント賞も獲得した。

 

山岳賞は草場啓吾 (日本大学)で、ゴール勝負で先行した岡本隼(愛三工業レーシングチーム)は3位表彰台を獲得した。岡本隼も実は日本大学の選手として学連のレースを走っているが、ツアー・オブ・ジャパンやツール・ド・北海道のような大きな大会では愛三工業の契約選手として走っている。
また、若い選手にステージレースで活躍する場を提供するこの大会の意義から、昨年新設されたU26総合リーダーの部では鹿屋体育大学が総合首位となった。

 

ダミアン・モニエや西薗良太ら強力なチームメイトのおかげでステージ優勝できたと、喜びを分かち合う鈴木龍(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)

第1ステージ表彰式 左からピエロパオロ・デネグリ(NIPPO Vini Fantini)、鈴木龍(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)、岡本隼(愛三工業レーシングチーム)

自らの誕生日にアタックして見事山岳賞を獲得した草場啓吾 (写真右 日本大学)。 「とにかく目立ちたかった!」 と若さあふれるコメントにプレスインタビュー会場の全員が笑顔になった

リーダーチームとなったブリヂストンアンカーサイクリングチーム。左から水谷監督、鈴木龍、ダミアン・モニエ。鈴木龍は2日目からエース西薗良太の総合優勝を狙うために動くと断言。こういった役割分担はロードレースがチームスポーツたる由縁だ

そして翌第2ステージ、今回最長距離となる北斗市運動公園前 〜 白神岬~木古内駅前の185㎞では大学生たちがさらなる活躍を見せた。山岳賞争いを繰り広げる草場啓吾 (日本大学)に対して、逆転を狙う冨尾大地(鹿屋体育大学)が2日連続で逃げグループに入っている中田拓也(インタープロサイクリングアガデミー)、小森亮平(愛三工業レーシングチーム)ら4人で逃げを決めたのだ。

北海道最南端の白神岬を行く逃げの4名、鹿屋体育大の富尾大地が山岳賞ポイントを狙って逃げた

北海道最南端の白神岬ではリーダーチームのブリヂストンアンカーサイクリングチームがメイン集団をコントロール

白神岬を行くメイン集団とチームカーの隊列

第2ステージの2つ目の山岳ポイントを1人で逃げ続ける小森亮平(愛三工業レーシングチーム)が通過し、下ってからは平地での集団スプリント勝負へ持ち込まれる展開が濃厚となった。

第2ステージのラスト5km地点を単独で逃げ続ける小森亮平(愛三工業レーシングチーム)。チームメイトがメイン集団の前を引かなくていい状態を生み、エース岡本がゴール勝負で有利に展開できる

ラスト5km地点。前に同じ愛三工業レーシングチームの先輩、小森亮平が逃げているためチームメイトの岡本隼らがゴール勝負に備えて脚を温存できている

大学生がかつてない大活躍を上げた第2ステージ

ゴールは木古内町のメインストリートを行く平坦でのスプリント勝負となった。一斉に飛び込んでくる集団がゴールラインを通過する。観客の歓声とともに最初にゴールラインを通過したのは岡本隼(愛三工業レーシングチーム)だった。

第2ステージのゴールスプリントは岡本隼(一番右 愛三工業レーシングチーム )が獲った。ゴール前ではどんな気持ちでしたか?の質問に「伸びろー!!って思ってました!」 と元気に答え、場内の笑いを誘った

ゴール後に岡本隼は「自分は日本大学の選手でもあるが、今回は愛三工業レーシングチームの看板も背負って走っている。先輩の小森さんがあれだけ逃げてくれたので負けられなかった。去年は大学のチームで出場できるだけでもありがたかったですけど、今はこの大会に出たくても出られない多くの大学生選手の代表としても、結果を残せてうれしいです。明日は短いステージ(77㎞)なので、全力でこのリーダージャージを守りたいです」と語った。

また、山岳賞はこの日逃げに乗った鹿体育大学の冨尾大地が日本大学の草場啓吾 と同点に並んだが、総合順位4位をキープしている草場啓吾が総合山岳賞を守った。

インカレではともに日本大学の選手として走った岡本隼と草場啓吾の日大コンビが、総合リーダーと総合山岳賞のジャージを獲得、プレスインタビューもこの2人を囲んで行われた

第2ステージ優勝と総合リーダージャージ獲得を喜ぶ別府匠監督と岡本隼(愛三工業レーシングチーム)

翌最終ステージの函館山で有力チームのエースたちが攻撃を仕掛けて10名以下での争いとなることが予想されるので、クライマーではない岡本隼が総合リーダーを守るのは難しいのかもしれない。だが、ツール・ド・北海道という31年も続く国際ステージレースの歴史のなかで、プロ選手との実力差から一時期は“お荷物”とまで揶揄されてきた学生たちがこれだけの活躍を見せたことは記憶にない。
3年後の東京オリンピック、またその次に開催が決まった2024年パリ、2028年ロサンゼルス オリンピック開催の頃には、きっと今のU23の世代の選手の中から新城幸也(バーレーン・メリダ)、別府史之(トレック・セガフレード)らのように、UCIプロチームで活躍する次世代選手が出てくると期待できるのではないだろうか?
ツール・ド・北海道は長年北海道の地域や日本や海外の学生(U23)を育てる大会意義を持って立ち上げられ、続いてきた大会でもある。日本の自転車競技界にとってこのような国際大会での若い選手の活躍という明るい話題を提供してくれたことは偶然ではなく、大会が目指してきた姿だったに違いない。
(後編に続く)

 

後編では最終ステージとなる第3ステージの模様と初出場で活躍を見せたインタープロサイクリングアカデミーのチームカー同乗取材、大会関係者インタビューなどを中心にお伝えします。

 

テレビ放送予定のお知らせ
ツール・ド・北海道2017
HTB(道内放送)
10月9日(月・体育の日)14:00~14:58

 

Text & Photo :加藤 修(Shu Kato)

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